尖閣の領有権についての見解

6月2日〜4日の訪中は、野中団長と中国側の「棚上げ」発言が注目されることに。今日の京都新聞朝刊にも掲載されています。
私も参加団員の一人として、皆様に自身の見解をお伝えします。

今回の訪中を終えた泉健太の見解は、以下の通り。

(1)「尖閣は日本の国土」
(2)「棚上げ」解釈は両国で別々。
(3)訪中団は価値ある機会。

まず(1)、尖閣は1885年から日本政府が現地調査を含め、他国の支配下にないか10年かけて審査し1895年に閣議決定で沖縄県に編入するという国際法上の正当な手続きを行った国土です。これは侵攻でも強奪でもなく、この手続きを無効を主張するのは
国際法の正当性を否定するものであり、我が国の領土であることは明白です。私は日本政府と同じスタンスです。

そして(2)、今回の野中団長の「棚上げ」発言の解釈。
私自身は「領有権は日本」という考え方ですから、団長の「棚上げ」発言も別な取り方をしていました。

野中団長の発言は「尖閣の緊張を緩和させ、日中友好と互恵の関係に戻すため、1972年の田中総理、大平外相、毛主席、周総理の先人の知恵に学ぶべき」そして「尖閣問題を棚上げする合意があった」というものですが、私はこれは以下のことだと思ったのです。

日本の外務省資料には当時の会話記録が残っています。

(1972年9月27日の日中首脳会談)
田中総理「尖閣諸島についてどう思うか?私のところにいろいろ言ってくる人がいる」
周総理「尖閣諸島問題については、今回話したくない。」

(1978年10月25日の日中首脳会談後の会見)
トウ小平「今回、平和友好条約交渉の際も同じくこの問題にふれないことで一致した。(中略)こういう問題は、一時棚上げしてもかまわないと思う。10年棚上げしてもかまわない」

この会話記録の最後の部分、中国の側から最高指導者のトウ小平氏が「棚上げ」してもかまわない、と言っている。私は団長がこのことを言っていると思いました。

そしてこのトウ小平のいう「棚上げ」とは「棚上げしても構わない」という会話の通り、事実上、中国側の主張を棚上げしてよい、と言っているのです。これは尖閣に関する「中国側主張の棚上げ」提案であり、「日本の領有権の棚上げ」を指す言葉ではありません。

今回、中国側はそれを「領有権の棚上げ」のように報道しましたが、これに乗る必要は一切ありません。1972年以降、中国側も日本に領有権があることを、あえて論争せずに、その上で日中友好交流を発展させてきたのです。

私は団長の発言が領有権そのものの「棚上げ」ではなくて、かつて中国側が自ら尖閣の論争を「棚上げ」しようと提案して、日中友好を優先させてきた知恵が先人にはあった、という解釈であるなら納得できます。日本は過去一度も「領有権そのもの」を棚上げした事実はないのですから。あらためてですが、私は「領有権は日本」という
考え方です。

そして(3)、この訪中は日本側にとって非常に貴重な機会でした。
残念ですが安倍政権の対中強硬姿勢で、実は日中政府間対話が滞っています。
外交は定点観測が重要なのですが、そんな中での今回の訪中団は、日本にとっても今年1月の公明党代表以来の要人会談であり、中国側の考えを知る上で非常に価値ある機会だったのです。どんな接遇をするか、会談に誰を出してくるか、どんな表現で発言するのか、全てが貴重な情報でした。

「虎穴に入らずんば虎児を得ず」今回の訪中を日本がいかに活かすかが問われています。日本の主張を世界に広げ、日本が平和友好のリーダーであり続けられるよう働きます。

皆様のご理解よろしくお願いします。